▼撮影:岡戸雅樹 ▼デザイン:柳澤篤





三田誠広さんのプロフィール
1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒。
1977年、「僕って何」で芥川賞。作品はほかに「いちご同盟」「空海」など。
日本文藝家協会副理事長。日本文藝著作権センター理事長。著作権情報センター理事。
日本点字図書館理事。著作権問題を考える創作者団体協議会議長。

[オフィシャルサイト]
http://www.asahi-net.or.jp/~dp9m-mt/index.htm




残間 三田さんも昨年、還暦を迎えましたね。
いかがですか、還暦の心境は。



三田 去年、45年ぶりに中学の同窓会が開かれまして、
出席してきました。みんな60歳になって、
どうなってるかというのに興味があったものですから。



残間 45年ぶりというのはすごいですね。
再会した旧友たちは、どう変わっていましたか。



三田 みんな何者かになっていましたね。
ちっとも勉強しない奴がいて、こいつは将来
野たれ死ぬんじゃないかと当時は思っていたんですが、
ちゃんと立派な人になってました(笑)。



残間 この還暦ぐらいの年頃というのは、
社会的にもプライベートでも環境が変化するせいか、
今になって自分探しをしているような人も見受けられますね。



三田 仕事をリタイアして、まさに「僕って何」状態だと思います。
新たに人間関係を作っていく必要がありますよね。




思うんですが、自動車のメーターって、
10万キロで0に戻りますよね。60歳になることって、
20歳に戻ることじゃないかと、最近考えてます。
会社や家庭での肩書きがいったんリセットされて、
また20歳の頃の状態になる。

夫婦もそうですよね。子育てが終わると
いったんリセットされて、もう一度恋愛をするのか、
違う関係を築いていくのか迫られると思います。

そんな風に60歳は一から始めるということで言えば、
これから社会に出ようとする20歳と共通点があるんですが、
ひとつ違うのは、20歳のような不安はないということですね。
社会で自分の能力を発揮して、
何とか食べていかなきゃというプレッシャーがない。
60歳は小遣いが不足ならバイトでもすればいいんですから。

週3回コンビニでバイトして、
あとの4日は路上ライブなんて暮らしも可能なんです。
本当の20歳より、よっぽど面白いことがやれると思いますよ。



残間 確かに先行き不透明な今どきの20歳に、
そんな度胸がある人は少ないでしょうね。
三田さんは還暦になってみて、
"衰え"なんて感じたりすることはありますか?






三田

今のところは身体を動かしていれば大丈夫です。
家でボンヤリと大画面テレビなんて見てたら、
すぐに衰えるんでしょうね。
かといってウォーキングだけでは頭が衰える。
やっぱり誰かに会って話をしないと。



残間 そこは男性が不得手なところですね。



三田 女性はたいてい大丈夫なんですよ。男性は地域だと、
ゼロから関係を構築しなきゃいけない人も多いと思います。
だから男性の場合は、趣味のつながりから、
新しい人間関係を作っていった方がいいかもしれませんね。

男性も女性もそうなんですが、会社や家庭で
肩書きがついていると、哲学的な悩みがなくなるんです。
その役割を果たすことに追われる。
ところが、その肩書きがなくなった時、
「僕って何」「私って何」状態になる。
そこでゴロゴロしていては呆けてしまいますよね。

やっぱり人とコミュニティを作っていくことが大事なんで、
そこでこそ自分を発見できる。
ただし、このあいだまで部長だったとか、重役だったとか、
父親とか母親とか、前の肩書きを引きずっていちゃだめですよね。
裸になれるかが問題です。






残間

さっきの週3日コンビニでアルバイト、
あとは路上ライブという暮らしも、
肩書きをひきずっていてはできないでしょうね。



三田 自分が20歳だった頃の気持ちを思い出して欲しいんですよ。
青春というのは、不安もありましたけど、
未来はどうなっていくんだろうという期待がありましたよね。
ところが今度の場合は、不安はあまりない上に、死ぬまでの、
タイムリミットのない青春なんです。



残間 (笑)それは勇気づけられる言葉ですね。
裸の自分に戻れたら、確かに怖いものなんかありません。

今日はありがとうございました。
三田さんには読書会や大人の恋愛講座などで、
是非協力をお願いしたいと思っています。
これからもよろしくお願いします。

(終わり)