▼撮影:佐野敦 ▼デザイン:柳澤篤






藤田一照さんのプロフィール
(ふじた・いっしょう)1954年、愛媛県生まれ。
灘高校から東京大学教育学部教育心理学科を経て、大学院で発達心理学を専攻。
院生時代に座禅に出会い深く傾倒。28歳で博士課程を中退し禅道場に入山、29歳で得度。
33歳で渡米。以来17年半にわたってマサチューセッツ州ヴァレー禅堂で座禅を指導する。
2005年に帰国し、現在、神奈川県葉山の「茅山荘」を中心に座禅の研究、指導にあたっている。
著作に『アメリカ禅堂通信』、訳書に『禅への鍵』『ダルマの実践』『フィーリング・ブッダ』など。




クラブ・ウィルビー(以下cw)


ちょっと話は変わりますが、
17年半アメリカに滞在していたということですが、
結構な年月ですよね。その間に結婚もされましたし、
お子さんも二人生まれて。何度か帰国することはあったと思いますが、
これだけ長い間、外から日本を眺めてきて、何か変化を感じますか?
一照さんには今の日本はどう映っているんでしょうか。



一照 確かに17年半というのは長いですね。
30代のほとんどと、40代全部ですから。
昭和から平成に変わった時も向こうにいました。

うーん………、変化といえば、
やはり、どんどん価値が一元化してるっていうことですかね。
そして競争は苛烈になっている。
一元化って、坐れる椅子が少なくなりますからね。
すると、ますます坐りたくても坐れない人が多くなってくる。
でも坐っている人も幸せではないし、坐れない人は当然、幸せじゃない。
要するに、みんな幸せじゃない。
これ、どこまで行くんだろう、という気がしています。
私はとっくにその競争からは降りてしまいましたけれど。






cw

降りるというより、自分に合った価値観を見つけたわけですよね。
でも、一元化された価値観に生きている人も、
そうじゃない風に生きたい自分を感じていると思います。
一元化されたというか、今いる価値観から外れると生きづらくなるのは、
ある意味、当たり前なんですが、
そのプレッシャーのかかり方がどんどん上がっているのが、
一照さんの言う日本の変化なんでしょうね。
いろんな慣習や規範が崩れて、何でも自由になる一方で。



一照 自分の価値観があれば、
まわりで勝手に一元化していったっていいんですけど(笑)、
周りが脅かすんです。
そんな生き方ではロクな人生が送れないよって。
私も散々脅かされましたよ。



cw そうですね。おせっかいなぐらいに脅かします。
「そう、それでいいんだよ」なんて、たいてい誰も言ってくれません。



一照 言わない言わない(笑)。
私が20代の後半に大学院をやめて
禅の世界に入ろうとした時も、かなり脅かされました。
もっと自分の好き嫌いにこだわってもいいと思うんですけど。

ウィルビーのメンバーは50代、60代の方が多いと聞いていますが、
そういった価値観の見直しという面からも、
坐禅をやるにはいい時期かもしれませんね。
若くてイケイケの時には、なかなか「我」を離れて
世界を見るというのは、難しいものです。




cw

確かにバブルの頃なんて、
そういう気持ちは起きにくかったでしょうね………。

さて、いろいろとお話を伺ってきましたが、最後に、
今回のウィルビーの坐禅会に参加される方に
メッセージをいただければと思います。
参加者といってもわずか20名ですけれど、
これから坐禅をやってみようという人、
全ての方への助言にもなると思いますので。



一照 皆さん、坐禅についていろいろイメージを持っているだろうけど、
なるべく先入観を持たずにというか、持っててもいいんですが、
それはとりあえず置いといて、
素直でまっさらな気持ちで参加して欲しいですね。



cw もしかしたら真面目な方は、すでに坐禅関係の本を
2〜3冊読んで研究してるかもしれませんね。



一照 あまり期待しないで欲しいなあ。(笑)

いや、期待するっていうのは、
こういうことが起こるだろうと思うことですから、
視野が狭くなるんですよ。それに、期待というものの源は、
さっきから言っている「我」ですよね。






cw

(笑)はい。



一照 それに本当に大事なことは、自分の期待とは別の、
まったく違う方向から来るかもしれないんで、
視野が狭くなっていては気づかないかもしれない。
でも、そんな段階のところには、
一回の坐禅会ではなかなか行けないんですけどね。
せいぜい、「気持ち良かった」ぐらいで。

だから、今回のウィルビーの坐禅会のような形で
坐禅をプレゼントするのは、危険があるんですよ。
確かに気持ちいいんですが、そこだけがクローズアップされると、
最初に言った「それ以上のもの」に目が行かなくなります。
そういう事は当日、言おうと思っていますけれどね。
頭から水をぶっかけるような感じになるかもしれませんが。

とにかく、やってみて楽しんでください!



cw それでは当日はよろしくお願いします。

今日はお話を伺えて、とても面白かったです。
坐禅がどんなものが分かったなんて言いませんが、
坐禅に対する大枠なイメージを持つことができた気がします。
もちろん、言葉では表現できないのですが(笑)。
ありがとうございました。

(終わり)




事務局より:
今回の坐禅会への申し込みがたいへん多かったことから、
年内にも第2回目の開催を検討しています。
詳細が決まりましたら告知させていただきます。