残間
本日は2011年の年男・年女、そしてめでたく
還暦を迎えるお二人にお集まりいただきました。
よろしくお願いします。



大石・坂村よろしくお願いします。

残間 まずは2010年のことを振り返りましょうか。
坂村さん、2010年というのは、どんな年でしたか。
漢字一字で表すと「暑」らしいですけど。
(注:このインタビューは2010年12月22日に行われました)



坂村 確かに暑かったですね! 2010年は。
で、2010年、漢字一つで言えるほど
単純ではなかったと思いますが、
僕個人としては、ここ数年ずっとそうなんですけど、
ますます日本での仕事よりも、
外国での仕事が比率として増えていますね。



残間 外国に縁がない人、外国に回路が
つながっている人というのも分かれてきましたね。
いい悪いじゃなくて、世界を相手にせざるを得ない人、したい人。
世界を相手にした方がいい領域、でもそれには難しい領域。
いろいろと見えてきました。



坂村 まあ人生いろいろというか仕事もいろいろですから。
でも最近強く感じるのは、
どうも日本は今元気がなくて
新しい時代に「変われない」んですよ。



残間 日本人が?



坂村 ええ日本人がなんですが結果、日本の社会、国の形。
進化とかイノベーション、どんどん新しい事をやって
変わっていかなきゃいけない時に、 なかなか変えられない。

特に僕のいるテクノロジーとかサイエンスの世界では、
進化が常に起こっていきますよね。
でもそれだけでは社会に影響をあたえることはできなくて、
技術が進化するのに合わせて考え方とか制度とか法律とかを、
一緒に変えていかなきゃいけないんです。
ところが日本はそこが迅速に変えられないから、
世界に取り残されちゃう。






例えば、アップルがiPodというのを作りましたよね。
音楽プレーヤーです。
日本にはずっと前からソニーのウォークマンというのがあったんですが、
あっという間に差をつけられてしまいました。なぜか?

要するに日本は、「iTunes ストア」のように、
ネットで楽曲を売るというシステムが、
なかなかできなかったんですね。



残間 法規制で?



坂村 法規制も絡みますが、
ソニーがたまたまレコード会社持っていたこともあって、
いろいろな事を考えたり躊躇してるうちに、
アップルはどんどん始めちゃった。それでふと気がつくと………。

実際に見ればわかりますが、
プレーヤーは、僕はソニーの方も良くできていると思います。
音も良いしデジタル雑音消去装置もはいっている。
ところがシステム全体で言うと、
ネットから音楽を買うとかが初めのうちに出来なかったから。



残間 そこで、どうして出来なかったのかしら。
頭が切り変わらなかったから?





坂村

日本人は本質真面目ですからね。
いろいろ考えちゃったんでしょうね。
結果、制度が変えられなかったんですね。

こういう事は他にもいろいろ例があって、
グーグルという会社がいま世界を席巻してますよね。
誕生してあっという間に大きくなりました。
インターネットが商業利用されるようになったのは、
1990年ぐらいからですが、
日本でも検索エンジンの開発は当初からやってたんですよ。
NTTとかもやってました。
じゃあ、どうしてグーグルみたいになれなかったかというと、
ネットでの知的所有権をどうクリアするとか、
間に合わなかったんですよ。
同じようなことが、今、電子ブックでも起きようとしています。



残間 それって、制度を決める行政の人たちが、
ネットのことをよく理解出来なかったということ?



坂村 それもありますが、
例えば検索エンジンで検索しますよね。
すると、変なものも出てくるわけですよ。
要するにアダルト系のコンテンツとか。
何でも検索できるんですから、当然なんですけど。
でも検索して、そういうものが出てきた時、
当時、日本の大企業の幹部がびっくりしたのは、
想像に難くないわけです。

「当社の名前のついた検索エンジンを使って
こういうものが出てきて、
どっかからクレームがついたら、誰が責任取るんだ」
なんてことをムニャムニャ言ってるうちに、
アメリカなんかは、どんどん法律を変えてクリアしていった。
例えば、そういうものが出てきた時、誰の責任かとか、
検索エンジンを作った会社の責任ではないとか、
クレームがついた時にすぐに排除すれば裁判になっても問題ないとか……





残間

まずは、前に行くという感じですね。



坂村 そう! 前に進む感じで考え方、制度を変えていくんですよね。
そういう風にアメリカは、社会を作っていくわけです。
ところが日本はちょっとでもマズイところがあると沈黙しちゃって、
それが解決するまではで行動を起こすのを止めようという空気になる。
これじゃあ10年経ったら差がついちゃいますよ。
ウォークマンと同じで技術の差じゃないんです。

それから最近スマートフォンというのがありますよね。
アイフォーンとかアンドロイドですとか。
あれの携帯との一番大きな違いというのは、
電話会社にことわらないで新たにソフトウェアを入れたり、
ビジネスが出来る点です。
ところが日本の携帯は、電話会社にことわらないと、
何も出来ないことになってるんですよ。



残間 なるほど。



坂村 技術じゃなくてガバナンス、まあこれも制度の問題なんです。
電話会社によろしいですか? とお伺いを立てて、
「ダメ」と言われたら全部パー、審査に時間がかかり過ぎると、
新しいことを考える人たちが、
「こういうプラットフォームでやるのはやだな」と思っちゃうんですね。
それに対してアンドロイドとかは、
だれかにことわらなくてもいろいろやっていいことになってます。
パソコンみたいに、新しいことを思いついた人が
新しいアプリを開発して販売したり、
電子ブックコンテンツを流通させたりとか。

ただしアップルはメーカー、電話会社ではありませんが
日本の電話会社と同じで閉鎖的なんです。
何かやろうとするといちいちアップルにお伺いを立てなきゃいけない。
でも日本と違うのは、それを世界的規模でやってます(笑)。
その差が出ちゃってますね。



残間 坂村さんは、それに類することを、
いろんなところで折々言っていますが、
いくら言っても変わる兆しはありませんか。



坂村 全く新しいビジネスモデルの構築とか、社会制度制度改革とか、
電子知的所有権とか人々の考え方の変革とかが、
なかなかできませんよね。